今更ながら、教団Xを。
こんばんは、おりょうです。
今宵はただただ吐き出すだけの投稿になりそうですが、お付き合いくださると嬉しいです。
さて、題名にもあるように中村文則さんの小説、教団Xを読みました。
元々面白いとは聞いたことがあり、興味はあったのですが、
実際手に取るに至った要因は、タイプライターズという番組の動画。
芸人であり、作家でもある又吉直樹さんと、アイドルであり、作家でもある加藤シゲアキさんがゲストを迎えて対談する番組です。
この番組を知るきっかけになったのは、長らくお慕いしている椎名林檎さん。
椎名さんと、西加奈子さんの対談を拝見し、西さんの視点や考え方、作家としての覚悟に感銘を受けたのですが、その西さんがタイプライターズに出演されており、またまたそこに中村さんが出演されていたのです。
教団X
一人の青年が、自分の元から突然姿を消した女性を探すのですが、行き着いたのは名も無い謎のカルト教団。重なり、絡まり合うそれぞれの思想、男女、性、宗教、化学、戦争、企業、国家。全570ページの超大作です。
読み進める最中も、読み終えたあとも、ただただ圧倒され続けた作品でした。
それぞれの人物の抱えている過去、それによる現在、細かな心理描写。受け止めなければいけない感情が激しく、読み進めるのにかなりの体力を消耗するのにページをめくる手が止められない。これ以上、この物語の先を知るのが恐ろしいのに終わってほしくない。エネルギーがなだれ込んでくるようなエンターテインメント作品でありながら、誰もが向き合わざるを得ないようなリアリティ。
カルト教団について書かれているとあり、もっと狂気的で人知の域を超えるような理解不能な描写で話が進むのかと思いきや、人間と人間が生み出す闇、それぞれの弱さ、葛藤。誰もが抱えうる感情が元となっており(登場人物それぞれの経験は凄まじいものですが)、それに化学、物理学、宗教、宇宙論、企業と国家の闇、戦争の犠牲と特需の闇等々、、決して小説の中のものだけではない問題が絡み合い、身近に訴えかけてきます。
フィクションだからこそ書くことが許された、現実世界の闇。フィクションでありながらフィクションではなく、絶望の中に望みを見出させようとする著者からの強いメッセージのある物語。
570ページと中村さんのあとがきを読み終えたとき、冒頭でお話した番組、タイプライターズでの西加奈子さんの言葉がよぎりました。
「自分と世界がどう繋がってるかってことに、私ほんまセコいから、あまりにも思いを馳せなかったんですよね。もう知らんぷり、苦しくて。例えば、いわゆる後進国と呼ばれるところに行ってその人たちの生活を見たときに、なんて自分は贅沢してるんや、ってその時は思うんです。でもトランジットでドバイに寄ったときに、免税安!って言って買うんですよね。そのときにもうトイレで吐きそうになるの。なにこの帰り?って。でもそれで、そこを突き詰めたら自分がおかしくなっちゃうって分かってるから、もう帰りの飛行機は無にして帰るのね。ハリウッド映画を観て。そういうことずっとしてきたから、いやでも私は作家やし、作家になったからには、少しでも苦しいことがあったらそれに向き合おうっていう覚悟をしたっていうか。」
よぎっただけで、それから何か自分の中で考えがまとまることはありません。この言葉に、物語に、はっとさせられるけれど、自分自身が追いついていないというか、、
自分の無力さを痛感しながらも、人との繋がりに一喜一憂したり、季節が連れてくる景色や空気に心を動かされる日常を健康的だとも思う。伝えたいことが伝わらなくて悲しくなったり、好きな音楽に脳味噌が痺れたり、素敵な洋服にときめいたり。それでも飽き足りず、まだ知らない世界を見てみたいと、欲まで出てくる。とてつもなく矛盾した感覚だと自覚しながらも、なにが正しいかなんて、そもそも正しいの基準があるのかどうかさえ、今の私にはわかり得ません。
でも、それでも読んでよかったと思える作品でした。
難しく受け止めなくとも、単純に物語としても面白かった。多数の人物の視点で時系列もばらばらで進んでいくのでもう1、2回は読まないと理解しきれない、、もう一度読みたいと思います。
そしてこの妙な後味にすっかりハマってしまい、先日二冊目を購入しました。
また読み終わり次第、記事にしたいと思います。